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光とは一体?
これまでは電気(電子)を制御する半導体に関して紹介してきました。セミオ君、今回はママに光る半導体について説明するようです。その為には、まず光が一体なんなのか、を知っておく必要があります。
それでは、光とはなんなのでしょう。よく電磁波の一種といいますが、そうすると電磁波の話もしなければなりません。ここでは、エネルギーの一種としておきます。
光のエネルギーとは?
かつてニュートンは光を粒子と唱えました。また、同時代のホイヘンスは光を波といっています。光の正体は、いまだに議論の余地があるようですが、現代では光は粒子と波の両方の性質をもつ物質とされています。
光のもつエネルギーは、量子力学という世界の分野で明確にされています。量子力学とは、とても小さい世界の学問の話です。光のエネルギーはその振動数に比例して強くなります。
この場合、振動数とは周期的な現象に関して同じ状態が毎秒繰り返される回数のことを言います。これに対して1回の周期的現象での長さのことを波長といいます。光の場合、波長の長さによって人間の目に見える色が変わってきます。
波長の長い方から、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順です。そして赤よりも長い波長をもつものは目に見えません。これを赤外線といい、逆に紫よりも波長が短くても目に見えず、これを紫外線といいます。
例えば、太陽の光は暖かいですよね?太陽の光が暖かく感じるのは、光の中に赤外線が含まれているからです。赤外線には、物質(例えば、人間)の中に振動を起こす力があります。物質内で振動が起きる事により熱が発生し、暖かく感じます。
半導体が光る原理とは?
では、半導体がなぜ光るのでしょう。
半導体が光るのはなぜか?
例えば、金属と金属をぶつけたりすると、火花のような光がでたりすることがあります。太陽の光は、水素が燃えて出ています。燃えるという事は、反応しているという事です。反応とは、一種の衝突です。
何かが光るときには、衝突もしくはそれに似た現象が起きていると言えます。半導体の場合も同じです。
半導体が光るときには電子が穴(ホール)におちる時に発光するのです。つまり、穴に落ちた衝撃(結合)で光を出すというわけです。
半導体が光るには
では、どうすれば光るようになるのでしょうか。説明を簡単にするために半導体の中でエネルギーがどのようになっているのか、考えてみましょう。これを理解するには、物質の成り立ちについて理解する必要があります。
原子の構造
物質はどんなものでも細かく刻んでいくと原子という状態になります。それをさらに細かくすると原子核と電子になります。ちなみに原子はその物質の性質をもった状態での最小単位ということになります。以下に半導体でおなじみのシリコンで紹介します。
シリコンの原子構造は以下のようになっています。
原子は原子核と電子とに分けられますので、中心は原子核、周りの赤い丸は電子です。電子のあるところを電子殻といい、内側からk殻、L殻、M殻といいます。それぞれ最大の電子数が決まっていて外側に向かって2n²です。つまりk殻は2*1²なので2個、L殻は2*2²なので8個、M殻は2*3²なので18個です
また、一番外側の殻を最外殻といってその軌道にいる電子のことを価電子(原子価電子)といいます。価電子のあるところを価電子帯といいます。英語ではvalence band (直訳で原子価帯)といいます。
ちょっと紛らわしいのですが、最外殻にあるから、必ず価電子というわけではありません。価電子とは、反応に使われる電子のことです。原子が安定状態になっていない場合には、他の原子と反応することがあります。
原子の安定状態とは
では、原子の安定状態とは、どんなことでしょうか。一言でいってしまうと最外殻電子の数が2、もしくは8になった状態です。この状態であれば、熱や光を与えても簡単には反応しません。
例えば水素の最外殻電子は1個で、ヘリウムは2個です。どちらもk殻が最外殻ですが、k殻には、2個までしか電子が入りません。そしてヘリウムの場合は最外殻電子が2個ですから、反応せず安定しますのでヘリウムには価電子は存在しないのです。
一方、水素の方は、最外殻にある電子が1個ですから、こちらは価電子ということになります。
最外殻電子の外側
先ほどのシリコンの原子構造をみると、M殻で終わっています。では、その外側には、なにも存在しないのでしょうか。実は低温時には電子は存在しませんが、温度が上がると電子が存在できる場所があります。
そしてここは、原子核の引力から自由になった領域とも言えます。この領域を伝導帯といいます。
半導体が光るとき
半導体が光るのは、伝導帯からおちた電子が価電子帯の正孔と反応したときにおきます。ここで、おちる、という表現を使うのはエネルギーが高いところから低いところへいくからです。では、どうすれば伝導帯の電子が価電子帯におちるのでしょうか。
いくつか方法がありますが、一般的には以前お話したPN接合をします。PN接合した半導体に順方向に電流を流すと半導体は光を発します。
元々正孔は、電子が抜けた穴ですから、PN接合したダイオードに順方向の電圧をかけるとN型半導体にある電子がP型半導体へ移動し、再結合し発光するという仕組みです。
皆さんはLEDというものを聞いたことがあると思います。LEDはLight Emitting Diode の頭文字をとったものです。上記がまさにLEDの基本の仕組みです。
光る半導体と光らない半導体
光る仕組みがわかったところで、以前からお話している半導体は全て光をだしていたのでしょうか。いいえ、例えば今最も半導体に使われているシリコンは光らないのです。光る半導体はガリウムという物質とヒ素という物質を組み合わせた通称ガリヒ素が有名です。
化合物半導体とは
正式にはヒ化ガリウムといいます。ガリウムのヒ化物です。なぜガリウムをわざわざヒ素と反応させたのでしょうか。半導体はゲルマニウムとシリコンからスタートしました。どちら14属の元素です。(高校の化学で習った元素周期表を思い出して下さい)
14属の元素の特徴は最外殻の電子数が4つという事です。それぞれの原子が結合した場合には、最外殻の電子が互いに補完しあい、4+4=8個の電子になっています。
最外殻が8個になればよいのであれば、13属と15属の組み合わせや12属と16属の組み合わせでもいいじゃないか、ということです。このようにできた半導体は化合物半導体と呼ばれ、代表選手がガリウムヒ素というわけです。
このように、人間が考え出した化合物半導体にはシリコンなどの半導体よりも優れた点があります。ひとつは、シリコン半導体に比べると内部の電子の移動速度が速いことがあげられます。もう一つが発光するということです。
シリコンが光らず、ガリヒ素が光るわけ
ちょっと難しい話になりますが、電子は粒子の性質と波の性質も持っています。通常電子の動きは粒子として説明できますが、半導体内では波として扱った方が説明できることが多いのです。
波ですから、波長や周波数というものが物質の性質としてでてきます。波長とは波の山と山の距離(谷と谷との距離でもよい)、周波数は単位時間に何回山と谷を繰り返すかです。
先ほど申しましたように半導体が光るためには、電子が正孔に戻る必要があります。
そもそも電子や正孔といったキャリアが発生するのはどのような時でしょうか。熱や光(エネルギー)与えた時に電子が価電子帯から離れて伝導帯に移動(遷移といいます)します。
元々原子核の周りをまわっていた電子はこの場合安定していますので、基底状態であるといい、飛んでいった電子を励起状態になっているといいます。
そしてこの時できた穴(正孔)にもどるためには、そこにいた電子がもっていたであろう波長の電子でなければ再結合できません。シリコンの場合は励起状態で最もエネルギーが低い電子の波長は、そこにいた電子がもっていたであろう波長と違っています。
しかし、ガリウムヒ素化合物半導体の場合、この2つの波長が同じであるため、正孔に電子が戻ることになり光を発するのです。
まとめ
神は言われた 「光あれ」 こうして光があった。
創世記第1章3節より
聖書にもあるように光とは生命にとって希望のようなものです。人類の発展は光を求め、光と共にあったといっても過言ではないのではないでしょうか。
人の世界にある光とはなんでしょうか。よく「希望の光」とか、「一筋の光」など苦しいときに生きる力になるような言葉につかわれていますね。そして光は反応のあるところに起きます。反応は人の世界の、人と人とのコミュニケーションに似ていると思います。
コミュニケーションがなければ人々のつながりもありえず、そこに希望の光が見いだせないと考えます。
コミュニケーションのないところに光なし、です。
便宜上、電子の動きをまるで数個のように説明してきました。しかし、実際には価電子帯とか、伝導帯というように電子はまるで帯状になって存在しています。
そしてそれぞれが基底状態や励起状態になっており、波長も様々です。さらにそれぞれが互いに影響しあっています。人もまた同じなのです。それぞれの性別、個性、性格、外見などが互いに影響しあうことにより「光」が発生するのです。
人が光るためにも、コミュニケーションが必要ということです。自分ひとりで輝くことはできない、ということですね。他人の協力がなければ、光ることはできないのです。
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[…] 半導体」でお話したとおり、電子が正孔に再結合したときに光ります。参考:光を放つ半導体 […]