バイポーラとユニポーラ
前回までのお話に登場したトランジスタはバイポーラトランジスタというものです。前回の復習になりますが、バイポーラとは英語でバイは両方(2つ)、ポーラは極という意味です。
この場合の極とは、+と-のことです。よく+極、-極という言い方をします。トランジスタのバイポーラは正孔(+)と電子(-)のことです。バイポーラトランジスタの場合、正孔と電子と両方使うのでバイポーラといいます。
これに対して、ユニポーラトランジスタというのもあります。ユニとは、単一のという意味です。服でユニセックスタイプといえば、男女ともに使える、つまり一つでいいということで使われますね。その他には、宇宙を英語でいうとユニバースといいますね。宇宙も一つだからです。
バイポーラトランジスタの動きを理解するには、正孔と電子の動きを理解する必要がありました。ユニポーラトランジスタの場合も基本的には同じですが、どちらか片方だけでトランジスタの動きが理解できます。
ユニポーラトランジスタの種類
そしてユニポーラトランジスタには、一般的に2種類あります。それぞれ接合型、MOS型と呼んでいます
接合型ユニポーラトランジスタ
上図は、接合型トランジスタの概略図です。上下にP型、挟まれるようにN型半導体があります。
次に、電源をつなぎます。実際に上図のようにつなぐことはありませんが、便宜上途中経過です。バイポーラトランジスタにエミッタ、コレクタ、ベースという端子がありましたが、ユニポーラの場合はソース、ドレイン、ゲートという端子名になります。それぞれ、源、引き出すところ、門という意味です。
今度は、ゲートに-の電圧がかかるように電源をつなぎます。これは逆方向のバイアスになるので、空乏層が広がります。
広がった空乏層が電子の流れを阻害することで、電流の流れをコントロールします。ユニポーラトランジスタの場合、この電子が通る部分をチャネル(チャンネルともいいます)と呼んでいます。チャネル(チャンネル)のそもそもの意味は経路とか道すじといった意味です。
上図のように電子をキャリアとして利用するものは、NチャネルFETといい、正孔を利用するとPチャネルFETといいます。つまり電子か正孔どちらか一つの極を使用するのでユニポーラと名付けられたのです。FETはField Effect Transistorの略です。
そして、注意しなければならないのが、必ずNチャネルFETのチャネル物質がN型半導体というわけではありません。次に登場するMOS型では、チャネルがP型でキャリアが電子という事があるからです。
MOS型ユニポーラトランジスタ
MOS型 のMOSとは、Metal Oxide Semiconductorの略で、金属 酸化物 半導体ということです。後に紹介する、集積回路に多く使われているのはMOS型FETです。構造的には以下のように金属と半導体で酸化物をサンドイッチにしたような形です。
酸化膜とは?
さて、ここで少し話がそれますが、半導体と金属の間に入っている酸化物が突然登場した、と思う方も多いでしょう。ここでいう酸化物はほとんどの場合、シリコン酸化膜が使用されています。化学記号は、SIO2です。
元々、半導体はゲルマニウムという物質が主役でした。ゲルマニウムは加工しやすいという特徴があります。しかし、一方その弱点としては、高温に弱いこと、希少な元素である、という事が大きな弱点としてクローズアップされてきたのです。
特に半導体は軍需のために技術が進歩してきたのですから、ミサイルのような熱を出すものの制御としてゲルマニウムは不適格だったのです。
これに対してシリコンという物質にも目が向けられていました。シリコンは、ゲルマニウムと比べて熱に強いという特徴がありました。しかし、活性が激しい、いうなれば、空気中の不純物をとても取り込みやすいという欠点がありました。
しかし、地球上の地表表面の元素割合は酸素の次に多い約25.8%といわれており、ゲルマニウムと違って非常に入手しやすい物質です。なんとしても利用方を見つけようとしていました。参考:地球の不思議
解決の方向性としては、シリコン上になんとか膜をつけて表面を保護できないか、と各所で研究が進んでいました。そして、ベル研究所のリンカンデリックとカールフロッシュの二人が酸化膜を発見しました。
この酸化膜の発見こそ、今の半導体技術の発展にはかかせないものとなったのです。
MOS型の構造
では、話をもとに戻します。MOS型FETトランジスタの構造を紹介します。以下の図はNMOS型と呼ばれるものです。
先ほど紹介したように、一番上が金属(電極)次が酸化膜、最後に半導体という構造です。この状態でソース、ゲート間に電源をつなぎます。ゲートの下の酸化膜は絶縁体なので半導体には電流は流れません。
また、ゲートには電圧がかかっているので、電界が生じます。電極には+の電荷が生じます。そのため、P型半導体の正孔が反発して酸化膜とP型半導体の境目(ここを界面といいます)から離れます。この状態を空乏状態と呼んでいます。
この状態からさらに電圧をあげるとP型半導体にある少数キャリアである電子が界面に寄ってきます。(P型半導体の中にも少数電子があり、逆にN型半導体にも少数正孔があります。)
この状態で、ソース、ドレイン間にも電源をつなげば、電流が流れるというわけです。そして、電子が詰まっている部分を反転層といいます。P型半導体なのに電子がキャリアになるから逆だというわけですね。
まとめ
ユニポーラトランジスタはFETともいいます。先に紹介しましたが、Field Effect Transitorの略です。日本語にすると「電界効果トランジスタ」です。Fieldは電界ことを指します。もっと言うと電圧で制御するトランジスタということです。
さてここからが本番です。例えばあなたが誰かに視線を向けているとします。あなたはなんらかの感情で見つめています。相手はあなたの視線を感じるでしょう。しかし、心は通じていません。これは、感情を電圧ととらえ、心を電子と例えると、電界が生じていても電子が流れない、ということに似ています。
ここで感情を強くしてみます。電圧が上がると、電子が界面に寄ってくるのと同じに、心が通じるようになります。例えば、好き嫌いの感情は相手に伝わりますよね。このように考えれば、わかりにくいFETも身近に感じられるのではないでしょうか。
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